クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)、性嗜好障害(盗撮、痴漢など)

クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)とは、窃盗(万引き)をやめたくてもやめられない状態を指します。広く使われる診断基準には、世界保健機関が定めたICD-10と、米国精神医学会が定めたDSM-Ⅴがあります。
当院では、DSMーⅤに加えて、DSM-Ⅴの公式ガイドブックも診断をするうえで用いています。それにより、より適切な診断ができると考えています。また、窃盗症の診断が出来ないと判断されるケースでも、窃盗行為が不適応学習(条件付け学習)と判断されれば、当院では治療対象となります。治療を受けられ、将来的な再発・再燃リスクを減らすことは、診断以上に重要なことと考えます。
クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)についてはまだ未解明な点が多く残されているものの、望ましくない行動に至るプロセスが学習され習慣化したもの(不適応学習)と考えられます。具体的には、窃盗行為と、それによって得られるスリルや快感などが関連付けられ記憶され、繰り返し行うことで嗜癖化していくというものです。当然、理性(前頭前皮質といわれる部位の働き)を用いて、窃盗行為をやめようとするはずですが、嗜癖化していくと衝動を抑えずらくなります。さらに、前頭前皮質の働きが弱まると、行動の抑制が効かなくなります。興味深いことに、当院院長が参加しました共同研究で、クレプトマニアの方をはじめとした行動依存症の方々の中に、ものごとの確率を正確に計算・ 判断できない方々がいること、その方々の右前頭前皮質の活動が減弱していること、などの結果を得ました(論文名は「研究」をご参照ください)。この結果は、クレプトマニアの疾患メカニズム解明に重要な示唆を与えるものと考えます。
加えて、当院では開院以来、性嗜好障害(盗撮、痴漢など)の方も積極的に受け入れております。これまでの治療経験では、性嗜好障害でも窃盗症同様に、条件付け学習を認めるケースがほとんどのため、窃盗症に対するのと同様の治療が有効と考えております。ただし、単に性嗜好の問題だけではなく、背景に性衝動が強いケースがあり、抗アンドロゲン薬や抗うつ薬の投薬により症状が著明に改善する症例を経験しています。性嗜好障害と一口に言っても、内容の違いや個人差の違いも治療効果に大きく影響するため、豊富な臨床経験をもとに、その方にあった治療法を選択しています。