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クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)について

クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)

 クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)とは、窃盗(万引き)をやめたくてもやめられない状態を指します。広く使われる診断基準には、世界保健機関が定めたICD-10と、米国精神医学会が定めたDSM-Ⅴがあります。
以下に、DSM-Ⅴの診断基準を示します。

  • ・個人的に用いるのでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
  • ・窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
  • ・窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感。
  • ・盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく、妄想または幻覚に反応したものでもない
  • ・盗みは、行為障害、躁病エピソード、または反社会性人格障害ではうまく説明されない。

☆当院では、DSMーⅤに加えて、DSM-Ⅴの公式ガイドブックも診断をするうえで用いています。それにより、より適切な診断ができると考えています。また、窃盗症の診断が出来ないと判断されるケースでも、窃盗行為が不適応学習(条件付け学習)と判断されれば、当院では治療対象となります。治療を受けられ、将来的な再発・再燃リスクを減らすことは、診断以上に重要なことと考えます。

 

    クレプトマニア(病的窃盗、窃盗症)についてはまだ未解明な点が多く残されているものの、望ましくない行動に至るプロセスが学習され習慣化したもの(不適応学習)と考えられます。具体的には、窃盗行為と、それによって得られるスリルや快感などが関連付けられ記憶され、繰り返し行うことで嗜癖化していくというものです。当然、理性(前頭前皮質といわれる部位の働き)を用いて、窃盗行為をやめようとするはずですが、嗜癖化していくと衝動を抑えずらくなります。さらに、前頭前皮質の働きが弱まると、行動の抑制が効かなくなります。興味深いことに、当院院長が参加しました共同研究で、クレプトマニアの方をはじめとした行動依存症の方々の中に、ものごとの確率を正確に計算・ 判断できない方々がいること、その方々の右前頭前皮質の活動が減弱していること、などの結果を得ました(論文名は「研究」をご参照ください)。この結果は、クレプトマニアの疾患メカニズム解明に重要な示唆を与えるものと考えます。